第二報道部オフサイド日記

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雪の詩

雪の日
 田中冬二  「春愁」昭和22年所収


雪がしんしんと降っている
町の魚屋に赤い魚青い魚が美しい
町は人通りもすくなく
鶏もなかない 犬も吠えない
暗いので電灯をともしている郵便局に
電信機の音だけがする
雪がしんしんと降っている
雪の日はいつのまにか
どこからもなく暮れる
こんな日 山の獣や鳥たちはどうしているだろう
あのやさしくて臆病な鹿は
どうしているだろうか
鹿はあたたかい春の日ざしと
若草をしたっている
いのししはこんな日の夜には
雪の深い山奥から出てくるかも知れない
お寺の柱に大きな穴をあけた啄木鳥は
どうしているだろう
みんな寒いだろう
すっかり暮れたのに
雪がしんしんと降っている
夕餉(ゆうげ)の仕度の汁の匂いがする


※原文は「い」→「ゐ」   「ろ」→「ら」になっております。


この詩から色々な光景が思い浮かび上がります。雪降るいなかの町の人通りの無い夕方の光景、雪の森、雪国の夕食前の香り、・・・・・・・。
騒々しい気持ちや、葛藤を忘れさせてくれる詩です。

この詩は、我々の小学校時代の国語の教科書にも載りました。
私はこの詩が大好きです。


<田中 冬二(たなか ふゆじ>1894年(明治27年)10月13日 - 1980年(昭和55年)4月9日)は、日本の詩人である。本名は吉之助。

銀行員として働きつつ、郷愁をテーマに多くの詩作を行う。専ら旅を題材とした詩を作り、山国や北国の自然、日常生活を初々しい感覚で表現した叙情詩集「青い夜道」(昭和4年)を発刊。多作ではなくマイナーポエットとも評されるが、一貫して日本の自然や生活に根ざした詩を作り続け、吉行淳之介は象徴的に「青い夜道の詩人」と評している。詩作のほか散文や俳句も手がけている。 堀口大學らと交友関係があった。