第二報道部オフサイド日記

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得るもの

地方点描:継続[本荘支局]
 漫画「タイガーマスク」の主人公を名乗る児童福祉施設などへの寄付が全国で続き、大きな話題になった。寄付とは違うが、にかほ市内の高齢者・障害者福祉施設で22年前から奉仕活動を続けている人がいる。市内のすし店主の男性(61)で、毎年施設利用者にすしを振る舞っている。

 「自分は好きなことをしてお金を稼がせてもらっている。何か地域のために貢献したい」。店を構えて15年ほどたち、経営も安定してきたころ、ふと思い立った。以来、年に1回、施設にネタを持ち込んで並べ、弟子や従業員とともにすしを握っている。

 始めた年に、すし店の常連客だった施設利用者が「おまえのすしをまた食べられるとは思わなかった」と、涙を流して感激していたことが忘れられないという。地元の歌謡サークルが趣旨に賛同し、すし提供の場に参加して利用者と一緒に歌を楽しむようになった。昨年はサッカー・ブラウブリッツ秋田の選手も加わり、新たな交流が生まれている。


 男性は「利用者の皆さんが喜んでくれる。自分も親を大事にするようになったし、自分も従業員も得るものが多い。社会学習ですよ」と話す。今年も5月に施設を訪れる予定だ。

 「始めたころと変わらぬ気持ちで静かに続けていきたい」と、男性はこれまで取材に応じてこなかった。今回は「そろそろ後に続く人が出てほしい」と、匿名を条件に話してくれた。寄付が連鎖的に拡大して脚光を浴びたその陰で、地道に奉仕活動を続けている人がいることを忘れないでおきたい。
<秋田さきがけ新聞より>

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